今回の山歩きでは、杉が印象に残りました。
愛鷹登山口バス停から山神社までの杉の植林地。
黒岳の自然杉について
将来の需要を見込んで沢山植えられてきた杉ですが、近年は、アレルギー鼻炎のアレルゲン物質の花粉を生じさせるため嫌われていますし、手入れが行き届かず荒れたままの杉の人工林が問題にされています。
どこにでも生えていて嫌われている杉は、何となく世界中にどこにでも生えているありふれた木だと思われがちですが、実は、日本だけ、それも本州と九州・四国だけに自生する固有種なんですね。
自生地は、青森県西津軽郡矢倉山から鹿児島県屋久島までで、垂直分布は、本州では、海抜0~2050m、九州で300~1850m。それ以外の地域、例えば沖縄や北海道に杉があったら、それは人が植えたもなのですね。
栽培適地は、平均気温12~14℃、年間降水量3000ミリメートル以上の谷あいで、湿気の多い砂質壌土か植質壌土がよい。 実生苗と挿し木苗があって、屋久杉や北山杉等の産地の銘柄がありますよね。ソメイヨシノのような挿し木苗ではない実生苗の方が割合として多いようです。
用途としては、建材、舟材や風呂桶、酒造りの樽に用いるほかに、長寿のため並木、寺社林防風林として植えられます。 造り酒屋に、杉の葉を丸くまとめた杉玉を軒先に掲げて、新酒が出来上がったしるしとしたり、杉を神木とする話しや境界の目印とする伝説が有って、古から人々の生活に密着した植物でもありますね。
愛鷹とは話がそれますが、恩田川(鶴見川水系)の流域に杉山神社と言う神社が多く点在・鎮座している理由は、隣の瀬谷や相模原の平らな台地上の地形と違って、長く細い谷戸が台地の奥まで入り組んで、谷戸の奥や崖の下にチョロチョロと水が湧くようなところがあり、そうした場所が杉が育つよい条件(湿気の多い土地)に合致しており、そのような場所が多くあって、実際、私が子どもの頃は、この写真に写っているくらいの太い杉の大木が神社でもお寺でもない場所に聳え立っていたのを覚えているので、きっと大昔には、沢山の杉の大木が育っていた土地であったからだろうと想像しています。
先人たちが苦労して植林した杉、日本固有の樹木の価値がもっと高まって、有効に利用されることを願っています。